個人再生と任意整理(債務整理)の違い
個人再生と任意整理、どちらも「今後も債権者に返済を行う」債務整理方法ですが、両者は大きく異なります。
大きく違う4つのポイント 個人再生と任意整理(債務整理)がどう違うのか、4つのポイントで比較します。 ⇒ポイント1 元金がカットされるか |
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ポイント1 元金がカットされるか
個人再生 | 任意整理 |
元金がカットされる | 元金はカットされない |
任意整理は弁護士や司法書士が、業者と今後の返済方法について交渉を行い、今後の利息(金利)をカットしてもらうという債務整理の方法です。業者との和解が成立すれば、あとは元金のみの支払いとなるので、毎月返済することにより確実に借金は減っていきます。例えば、7社から500万円の借入れがある方につき、約3年間の分割支払いでそれぞれの業者と和解が成立して、令和3年9月から毎月15万円(すべての業者への返済額を合算して)の返済をおこなうとします。この場合、令和3年9月分の返済として15万円を払うと借金は485万円に減り、同年10月分の返済として15万円を払うと借金は470万円に減ることになります。任意整理をする前は、毎月数パーセントから十数パーセントの利息を払われていたわけですから、払っても払ってもなかなか借金の元本が減らないとお感じになられていたと思いますが、任意整理をすることで毎月確実に借金の額が減っていくことになります。これは、任意整理を行うことの大きなメリットです。
しかし、上記の例のように、3年に渡り毎月15万円払っていくというのは、実際のところ月々の負担が大きく、かなり家計に余裕がないと無理です。それはどうしてなのか…原因は、任意整理の手続きでは今後の利息(金利)はカットされるものの、「元金自体はなんらカットされていない」という点にあります。一方、個人再生の場合は今後の利息(金利)がカットされるのはもちろん、元金自体も大幅にカットされます。借金の元金がどこまでカットされるかという計算方法は複雑なのですが、原則は借金の総額の5分の1までカットされることになります。つまり上記の例でいえば、500万円の借金が個人再生の認可により、100万円に圧縮されるのです。そのため、毎月の支払も3万円弱とかなり負担が減ります。この元金大幅カットが、任意整理と比較した場合における個人再生の大きなメリットということになります。
ポイント2 家族に秘密にできるか
個人再生 | 自己破産 |
同居の家族に秘密で進められない場合もある | 家族に秘密で進めることも可能 |
任意整理は、裁判所に申し立てをする手続きではないので、個人再生のように必要書類をご用意いただく必要がなく、同居のご家族にも完全に秘密で進めていくことができます。
一方、個人再生の場合はそういうわけにはいきません。同居しているご家族が保有している書類の提出を求められる場合があり、必然的に個人再生の申し立てをしていることを説明しなければならないことがあるからです。もっとも個人再生の場合でも同居されてないご家族(実家のご両親等)には完全に秘密で進めて行くことができます。
ポイント3 財産処分の必要性
個人再生 | 自己破産 |
原則処分する必要なし | 処分する必要なし |
自己破産と異なり、個人再生や任意整理では、原則としてお持ちの財産を処分する必要がありません(マイホームや車、預貯金、保険等)。しかし、まだローンを払い終わっていない車については問題があります。車をローンで購入している場合、業者が車の所有権を留保して販売しているケースが多く、この場合は車を返却する必要がでてきます(詳しくは、車検証、自動車購入時の契約書などを拝見したうえで返却の必要性について判断することとなります)。
任意整理の場合は、整理の対象とする業者を選択することができるので、どうしてもローンが残っている車を残したい場合は、車のローンを任意整理の対象から除いて、他の業者について任意整理を進めるということが可能です。
一方個人再生の場合は、すべての債権者が手続きの対象となるので、車のローンだけを払い続ける、ということはできず、ローンが残っている車をどうしても返却したくないという場合は、個人再生で進めていくのが難しいと言わざるをえないでしょう。
ポイント4 官報に名前が載るか
個人再生 | 自己破産 |
載る | 載らない |
任意整理は、弁護士・司法書士と債権者の間で私的な話し合いを行う手続きですので、官報に名前が載るということはありません。
一方、個人再生の場合は、お名前等の情報が官報に掲載されることになります。しかし、官報を定期的に読んでいるという人はほとんどいませんし、膨大な情報量ですので、そのことで知人等に個人再生の手続きをした事が知られるということは心配されなくても大丈夫でしょう。